芸術は足利豎学会の教養七科目という木の中で、技術と同様に”葉”の役割を担います。土壌-根-幹-枝に支えられ養分を受けた芸術という葉は、木の中で最も目立ち、青々と明るく鮮やかな色をしています。
芸術という教養の意義
日本の浮世絵が印象派をはじめ海外の芸術家に多くの影響を与えたことは有名な話です。「ラ・ジャポネーズ」を描いたモネや、数百枚の浮世絵を収集したゴッホ、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」に影響され交響曲「海」を作曲したドビュッシーなど、その影響は枚挙に暇がありません。
もし、海外から来た人に日本の芸術作品について何か尋ねられたとしたら、あなたはどれぐらい答えられるでしょうか?もしかしたら何も答えられず、外国人の方が日本人よりも詳しいという結果になるかもしれません。
実際、そうしたことは往々にして起こりえます。というのも、欧米諸国では芸術を教養として取り入れているからです。
日本では、芸術作品を感性の問題にしようとする傾向があります。この作品は好きだ、この作品はあまり好きではないといったように、個人の感性や好き嫌いといった感情のみで芸術と相対しようとします。
欧米諸国では、芸術作品には観察力が求められると考えます。芸術には芸術家の生きた宗教や文化、政治、思想が色濃く反映し表現されており、それを読み解くにも、宗教や文化に関する知識を要します。
そのような知識を背景に、芸術作品をじっくりと観察しその意味を解釈し、改めて味わう。これが、海外における芸術の鑑賞なのです。仮にこうした鑑賞でなく、全て個人の感性に委ねられる問題であったとすれば、オークションで絵画作品に何億円もの価値がつくといったことは起きないでしょう。
芸術作品はその宗教や文化、考え方を反映して結実した結果であるため、他者と作品について語り合う中で、お互いのバックボーンの違いを理解することができます。宗教については直接語れなくとも、芸術については語り合えるのです。
教養としての芸術の修養方法
芸術はその背景となる宗教や政治、文化などを理解することなしには、十分に味わうことはできません。西洋絵画であれば、古代ギリシア神話やキリスト教、宮廷などが描かれることが多く、これらの前提知識についての教養を深めることが、芸術を鑑賞する鍵となります。
足利豎学会の教養としての芸術も、芸術の背景となる文化や価値観を学ぶことをその主な方法としています。
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